FOLLOW US

お役立ち記事

2022.04.28

林業を仕事に!未経験でも大丈夫?気になる就職方法から働き方・年収まで

文:田中聡子
編集:ならのもりから編集部
写真:西優紀美 / 一部奈良県フォレスターアカデミー提供

森と暮らしが離れた現代において、「林業」という仕事の実態を知っている人は少なくなっています。地域によって成り立ちや方法にも違いがあるので、すんなりと理解するのも難しいところ。本サイトでは、そんな林業初心者にもわかりやすい林業の基礎知識から、気になる「収入」「資格」「就職」についても深めていきます。特に、奈良県内で林業に携わろうとした時に、まず知っておくべき情報を掲載。奈良県内の林業家の方々に実施したアンケートからリアルな体験談も伝えていきます。

<< Index >>
・そもそも林業ってどんな仕事?
– 森林作業員とは?主な業務内容
– 奈良県の林業の特徴
・どうしたら林業に携われるの?林業に就業するには
– 就職までのフロー
– 就職後のサポートやキャリアアップ
– 林業に資格は必要?取得していると有益な資格と取得⽅法
・実際林業家ってどうなの?気になる収入から、林業家のリアルな声
– 平均的な収入
– 林業家のリアルな声をご紹介

そもそも林業ってどんな仕事?

林業は、農業や漁業とともに農林水産業と呼ばれる第一次産業のひとつです。自然資源である森林を「伐(き)って、使って、植える」という形で循環利用しています。日本は、先進国のなかでも有数の森林大国。国土の7割にあたる2,505万haが森林です。その約4割にあたる1,020万haが戦後に植えられた人工林で、その半数が一般的な主伐期(利用期)である50年生を超えている現状があります。

しかし、他の第一次産業と同じく産業として衰退するなかで、林業を担う林業家は減少の一途を辿っています。1980年(昭和55年)には約14万6000人でしたが、2015年(平成27年)には約4万5000人となり、3分の1以下に。さらに、高齢化も進んでいます。

森林は、林業の手段なだけでなく、国土の保全、水源の涵養(かんよう)*、生物多様性の保全、地球温暖化防止、木材等の物質生産といった多面的機能があり、私たちに恩恵をもたらしてくれる存在。林業の衰退は、私たちの生活や暮らしにも大きな影響をもたらすことになるのです。

*参照サイト
林野庁
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/30hakusyo_info/
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/29hakusyo_h/all/chap3_1_4.html

*涵養(かんよう)
森林に降った雨や雪などの降水が、地中(土壌)に浸透し、地下水となって共有されること。

森林作業員とは?主な業務内容

産業サイクルフロー

特に、森林の現場で林業の中心を担うのが「森林作業員」です。木材生産に関する一連の作業を行っています。伐採後に土地を整える「地ごしらえ」、苗木の「植え付け」、苗木の生育を促すために周辺の雑草を刈る「下刈り」、周辺の雑木や成長の悪い木を伐る「除伐」、節のない木を育てるために下枝を切り落とす「枝打ち」、成長して混み合った木を間引く「間伐」、使用する木材を伐採する「主伐」、伐倒した木の枝を払って玉切りした木を運ぶ「集材・搬出」。一般的に木が育つまでには50年〜60年。森林作業員は、世代を超えて続けていく長い目と専門的な技術で林業を行っています。

[ 参考 | 年間 / 1日の仕事の例 ]
– 林業の年間スケジュール(例)
1~3月 :地ごしらえ
4~5月 :植栽
6~8月 :下刈り作業
9~12月 :保育、除伐、枝打ち、伐採(主伐、間伐)、枝打ち

– 林業の1日の仕事の流れ(例)
6時~8時 :起床・移動
8時~12時 :現場作業
12時~13時 :休憩(現場で昼食)
13時~17時 :現場作業
17時~22時 :夕食・就寝

奈良県の林業の特徴

奈良県は、日本有数の優良木材の産地です。奈良県を代表する「吉野林業」のはじまりは500年以上前で、日本最古の人工林であるという記録も残っています。そんな奈良県の代表木は、日本のスタンダードな樹種である杉・檜ですが、全国から買い手がつくほど人気があります。

奈良の木の特徴を生み出しているのは、育成方法です。一般的な地域より3〜4倍程度(1ha(=10,000㎡)8,000~10,000本植栽、ほかの地域では3,000本程度)、密集して植栽をします。そうすることで、成長がゆっくりなため木が太くなりすぎず、上部から下部まで幹の太さがあまり変わらない真っ直ぐな木が育ちます。年輪が細かく均一に入り、密度が高くなることから、節が少なく木目が美しい、たわみにくく強い木になるのです。

それには、200年、300年といったとても長い時間がかかります。木々の間隔を空けすぎないように気をつけながら何度も木を間引く作業を繰り返し、世代を超えて受け継いでいきます。

どうしたら林業に携われるの?林業に就業するには

長い歴史を持つ奈良県の林業だからこそ、入り口がどこにあるのかわかりづらいかもしれません。しかし現在、奈良県では未経験者や奈良県外の方にも門戸を広く開いていて、さまざまなフェーズの方に合わせたサポート体制を敷いています。林業に興味を持ったら、一人で悩まないでまずは相談してみましょう。専門の相談員とやりとりすることで、初めて知ることがあったり、自分が本当にやりたかったことに気付く機会となります。相談をすることで、就業前から就業後にかけての様々な悩みや不安を解消し、就業へ向けて、相談者の実情に合わせた最適な提案をしてもらえます。ひいては林業に対する理解不足や誤解を防ぎ、就業後のミスマッチを防ぐことになります。

下記の相談窓口より気軽に相談してみてください。
>> 相談窓口

就職までのフロー

林業就業チャート

相談を終えたら、就職を目指して、知る・体験する・学ぶというステップを通して、理解を深め技術を会得しながら、就職への道へとつながっていきます。林業への就業を考える方のほとんどが未経験者です。サポートを受けながら、自分にあった就職先を見つけましょう。

▽-知る :
– 森林の仕事ガイダンスin奈良

森林・林業に関心のある方や奈良県内での就職を検討中の方を対象として、説明相談会を開催しています!求人のある県内認定林業事業体がブースを設け、仕事内容や雇用条件、職場の雰囲気など企業担当者から話しを聞くことができ、WEB・SNSだけでは分からない企業の雰囲気を知ることができます。

– 森林の仕事フィールドツアー

普段なかなか見ることができない林業現場での作業や関連施設の見学など、1日かけて林業を体感してもらうことができます。

– 森林の仕事ガイダンス(東京・大阪・福岡・愛知会場)

都道府県の林業労働力確保支援センターや森林組合連合会が相談ブースを設け、一度に各地の林業に関する特徴や情報、作業の内容や就業までの流れについての説明や相談することができます。

▽体験する :
– 就業支援講習

林業への就業を希望される方を対象に、林業の基本を学ぶ座学、林業体験、職場見学、個別の就業・生活相談などが実施されます。全国各地で開催されますが、毎年、奈良県でも開催されています。講習は1日コースのほか、4~5日、20日コースがあり、受講料は無料です。本講習は、厚生労働省の委託事業(民間団体実施)の一環で実施されています。

– 奈良県フォレスターアカデミー 入学体験講座
2021年4月に、奈良県吉野郡吉野町に「奈良県フォレスターアカデミー」が開校しました。ご入学をご検討されている方に、森林・林業・木材産業を知って頂くため、体験型入門講座を開催しています。

– 市町村での体験イベント
開催のお知らせについて随時HPに更新していきます。

▽学ぶ :
– 奈良県フォレスターアカデミー

林業の本場、奈良県吉野町にある学舎で、体系的に林業を学ぶことができます。“奈良県フォレスターアカデミー”は、スイスのフォレスター制度などをモデルとした新たな森林環境管理を担う人材の養成機関として設立しました。 森林と人が共生していける未来・社会をつくることを目指して、「適地適木」・「適地適業」の考え方を基本とした教育により、森林・林業の担い手の育成を進めています。 脈々と受け継がれてきた吉野林業の教えとこれからの森林環境管理を学び、 フォレスターアカデミーは奈良・吉野から日本全国へ、 あらたな時代の林業を切り開く人財の育成・輩出を目指します。

▽就職する :
– 奈良県森林・林業無料職業紹介所(ならのもりから)
林業に特化した職業紹介・あっせん業務をおこなっています。求人の受付は奈良県の林業事業体等からのものに限られていますが、求職は奈良県内の林業に従事したいという方であれば、その方が日本全国どこにお住まいでも受け付けます。

Local Life in Nara Okuyamato
Local Life in Nara Okuyamato

奈良県への移住・定住を応援するポータルサイトです。本格的に奥大和地域への移住を考えている方はもちろん、奥大和地域への移住を検討している方を地域と繋ぐお手伝いします。

就職後のサポートやキャリアアップ
未経験の方を中心に、就職後のサポートやキャリアアップの制度もあります。林業でキャリアを積むには短期的、長期的なスパンでの作業を理解する必要があり、短期的には年間のサイクルを、長期的には森林計画の理解が必要になります。一通り作業を理解した後は、山の所有者に対して営業活動を行ったり、伐採計画を立てたり、マネジメント力が試される段階に進みます。

例えば、林野庁が2010年(平成22年)から導入している「緑の雇用」事業では、就職した事業体が認定事業体であれば、働きながら一人前の現場技能者になる能力を研修で身につけることができます。就職1〜3年目は、林業作業士(フォレストワーカー)研修で、OJT研修や集合研修を通じて、林業の基本姿勢や基礎力を習得。一人前の現場技能者になる能力を学びます。作業班長候補者など経験を積み職務力がついてきた就職5年目以上は、現場管理責任者(フォレストリーダー)研修で、判断力・指導力の向上、現場作業管理などを学んでいきます。

林業に資格は必要?取得していると有益な資格と取得⽅法
業務内容に応じて必要になる資格はいくつかあります。

[参考 | 必要な資格の例]
・ 刈払機取扱作業者に対する安全衛生教育(刈払機を取り扱う資格)
・ 伐木等の業務に係る特別教育(チェーンソーを取り扱う資格)
・ 車両系建設機械運転技能講習
・ 玉掛け技能講習
・ 小型移動式クレーン運転技能者講習

これらの講習・教育を修了していれば就業上有利と考えられますが、緑の雇用における研修や前述したフォレスターアカデミーでの授業でも取得可能です。実際に就職前の研修や就職後に資格を取得される方がほとんどですので、安心してください。

実際林業家ってどうなの?気になる収入から、林業家のリアルな声

平均的な収入
(月給)215,900円(手当等金額は含まず、税控除前金額、就業1~3年目の目安)

こちらの金額は、奈良県内の就業1〜3年目の林業従事者の平均的な収入です。都市の会社員などに比べると決して高い収入ではないですが、奈良県内での暮らしの経費を考えると、ほとんどの人が十分に暮らしていける金額です。「自然のなかで自分の手によって森林を育てていく誇りとやりがいのある仕事」という面もあるので、総合的な条件で林業家という仕事について考えてみましょう。

林業家のリアルな声をご紹介
「林業の課題点/苦労するポイント」「林業家に向いている人」「林業の魅力ややりがい」の3点について、実際の林業家5名の方に伺いました。

――林業の課題点 | 林業家が苦労するポイントとは?

Dさん(男性) 「業界全体として収入面はやはり課題かなと思います。ここは今後、国内材の市場価値を高めて林業家の収入もアップしていくような仕組みの改善が必要かなと感じています。ただやはり、他の仕事にはない魅力も大きい職業なので、副業などをしながら自らの求める環境を整えていくモチベーションの高い人たちが多い印象。その後、独立していく方も多いです。」

Eさん(女性) 「林業において女性が活躍できる場ももちろんありますが、山の中の現場はトイレがないため、トイレ問題は一番の困りごと。見えないところまで行って用を足すしかないのが現状です(笑)。他にも男性作業員と協力して作業するシーンでは、作業のペースやカットする木材の大きさなどを、相手と合わせるのに苦労することも多いです。もちろん安全第一で作業をするので、そこまで体力的にしんどいことはないのですが、機材の重さや大きさで苦労することや、女性サイズの作業服のバリエーションが少なかったりといったことは多いです。」

Cさん(男性) 「補助金の占める割合が高いことですかね。林業全体で考えると現在7割ほどが補助金で成り立っていると言われています。産業の在り方として、木を育て、伐採した木材の利益でまた次の木を育てるというサイクルを確立していくことが、林業の未来に向けての大きな課題かなと感じます。」

――林業家に向いている人・求められる人材とは?

Aさん(男性) 「戦後に植えられた杉、檜が収穫時期を迎えています。また、木が伐られた跡地を再び森にするために、どんな樹種を植えるのか、どのような森林を作るのか考えていく必要があります。体力は後からついてきます。現場に求められる人材は、とにかく安全に作業できる人。時間がかかっても良い、回り道をしてでも安全な行動ができる人です。」

Dさん(男性) 「奈良の林業は長い歴史を持っていますが、昔ながらの林業も大切にしつつ、未来の林業に向かって自ら積極的に動いたり、新たな取り組みにチャレンジするモチベーションの高い方、積極性のある方が向いているかなと思います。」

Bさん(男性) 「林業は一人の作業もありますが、複数人で協力してやる作業もあり、危険が伴う場面も多いです。最低限のコミュニケーションを取りながら相手のことを考えて、常に周囲に気を遣って行動できる方がよいかなと思います。」

Cさん(男性) 「自ら積極的に学び、技を盗み身につけようとする姿勢が大事かなと思います。特にこの世界は、一から十まで丁寧に教えてもらうという環境は少ないです。先輩の仕事や技を見て学ぶ、疑問に思ったことを自分で知らべ、深堀って答えを見つけていくような姿勢が求められます。それは感覚的なものではなく、木や土壌の性質などを理解しそれに応じてやり方を変えていく、といった知識の部分が大きいです。そういう意味では勉強熱心で探究心のある方が向いているかなと思います。」

――林業のやりがいと魅力とは?

Aさん(男性) 「自然の中で身体と頭をいっぱい使って仕事ができる、そしてその成果が目に見えてわかるのが林業の魅力です。お腹も空いて、夜はぐっすり眠れる。仕事終わりのビールが美味しいのも大きな魅力ですね(笑)。」

Dさん(男性) 「植え付けも間伐も全てそうですが、自分がやった仕事の成果が目に見えてわかる、形に残るのはやりがいを感じますね。自分が間伐や枝打ちをした森に、空から太陽の光が差し込んでくる光景はやはり気持ちがいいです。ただもちろん、20年、30年と時間がかかり、すぐに結果が見えてこない部分も多いので、そこにもやりがいや責任感をもって取り組む必要がありますね。」

Bさん(男性) 「何といっても自然の中で仕事ができることです。自然が好きな方なら本当に魅力のある仕事かなと思います。天候に左右されたり、自然相手が故の大変さもありますが、山で食べるご飯の美味しさ、休憩時に斜面に寝転がって空を見上げた時の気持ちよさが魅力です。」

いかがだったでしょうか?林業という世界のことが少しでも理解していただけたら嬉しいです。「林業に興味があるけれど、何から始めたらいいかわからない、仕事内容もよくわかっていない」、そんな林業未経験者にこそ、広くサポートが受けられる制度が奈良県にはあります。奈良県外の方ももちろん大歓迎。まずは気軽に、当サイトへご相談ください。

>> 相談窓口