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お役立ち記事

2022.04.28

移住経験者に聞く、暮らしのあれこれ|住まい探しから支援制度まで

文:那須凪瑳
編集:ならのもりから編集部
写真:西優紀美 / 一部奈良県フォレスターアカデミー提供

奈良県で林業に従事している方の中には、県外から移住してきた方も多くいらっしゃいます。もともと奈良に縁のあった方もいらっしゃれば、つながりが何もない中で自ら情報を集め、移住を決断された方もいらっしゃいます。今回は、県外から奈良県へ移住された5名の林業従事者の皆さんに「移住したキッカケ」や、「生活にまつわるアレコレ」まで、たっぷりお話を伺いました。「住まいはどう見つけたの?」「ご近所付き合いは?」……など、奈良県への移住を検討されている方にとって参考となる情報を掲載しています。移住に役立つ支援制度も紹介しているので、ぜひチェックしてくださいね。

[今回取材にご協力いただいた皆さん]
Aさん(34歳 男性)
職場エリア :宇陀郡曽爾(そに)村
業務内容 :作業道づくり・間伐・出荷など
家族構成 :夫婦+子供1人(0歳)
現在住んでいるエリア :宇陀郡曽爾村
おすすめのスポット :多輪峰(たわみね)の森周辺(曽爾村小長尾)
出身 :神奈川県
移住のキッカケと奈良を選んだ理由 :
建築の仕上げに使用する塗料などを扱う営業職に従事し、3年間勤めた後に退職。もともと環境問題に興味・関心があったことや、前職で木について勉強する必要があって、奈良県吉野町の山守さんに吉野の山を案内してもらったこともあり、奈良県で林業に従事することを決め、移住。

Bさん(35歳 男性)
職場エリア :吉野郡野迫川(のせがわ)村
業務内容 :国有林の造林・育林・下刈り・間伐など
家族構成 :夫婦+子供3人(9歳、7歳、0歳)
現在住んでいるエリア :吉野郡野迫川村
おすすめのスポット:立里荒神社(野迫川村池津川)
出身 :兵庫県
移住のキッカケと奈良を選んだ理由 :
動物や植物について学ぶ専門学校に通い、里山保全などについて学ぶ。その後、奈良県のオートキャンプ場に務め、1年ほどで退職。オートキャンプ場で山や自然に触れる機会が多かったこともあり、退職のタイミングで林業従事者の方に声を掛けられ、林業家になることを決意。

Cさん(45歳 男性)
職場エリア : 五條市
業務内容 :施業計画作成・山主さんと交渉
家族構成 :夫婦+子供1人(16歳)
現在住んでいるエリア : 斑鳩(いかるが)町
おすすめのスポット :法隆寺(斑鳩町)
出身 :奈良県吉野町(Jターン)
移住のキッカケと奈良を選んだ理由 :
奈良県吉野町にある実家が農業・林業を生業にしており、一時期作業に携わった。その後、他県で営業職として一般企業に従事。6年間ほど働いた後、奈良県に「Jターン」する。小さな頃から農業・林業を間近でみてきたこともあり、林業家に転身。

Dさん(42歳 男性)
職場エリア : 黒滝村
業務内容 :下刈り・間伐など
家族構成 :夫婦+子供1人(6歳)
現在住んでいるエリア :黒滝村
おすすめのスポット :お食事処 あきちゃん(黒滝村堂原)
出身 :山形県
移住のキッカケと奈良を選んだ理由 :
東京に家族で住んでいる中で、田舎暮らしや自然の中で働くことに憧れを抱く。林業の人手不足などの問題を知り「チャンスだ」と決心し、家族を連れ奈良県に移住。林業家に転身。

Eさん(36歳 女性)
職場エリア : 黒滝村
業務内容 :特殊伐採サポート(ロープ補助、下ろした木のカット、運搬)など
家族構成 :独身
現在住んでいるエリア :黒滝村
おすすめのスポット :入之波温泉(川上村入之波)
出身 :京都府
移住のキッカケと奈良を選んだ理由 :
空港で働いていたものの、「新型コロナウイルス感染症」の影響で半年ほど休業状態になる。そこで転職を考え始め、偶然、林業会社を見つけ興味を持つ。その後「林業就業支援講習」に参加し、講師の方に相談したところ奈良県黒滝村を勧められ移住。林業家に転職。

移住前に知りたい。暮らしのお役立ち情報

大事な住まい。物件はどう探した?

Aさん 「協力隊として入ったので、最初は役場に手配してもらいました。そこは同期とルームシェアという形で住んでいたのですが、その後一人暮らしをした際は周囲の方にも色々と話を聞きつつ、最終的には空き家バンクを活用しました。」

Bさん 「今の職場が社宅を用意してくれたので最初はそこに住んでいました。子どもが産まれて家族が増えたタイミングで、会社の先代が住んでいた持家を譲っていただけることになり、築40〜50年くらいの家をリフォームして住んでいます。ちなみに僕自身『結の森俱楽部』という野迫川村で活動しているNPO法人に所属していて、そこでは『空き家コンシェルジュ』と連携して、野迫川村の空き家情報も提供していますので、ぜひチェックしてみてください。」

Eさん 「私の地域ではそもそも空き物件が少なく、空き家バンクなどでもほぼ物件がない状況だったので、あまり選択肢はなかったのですが(笑)。それでも職場の方々に紹介していただいて無事に物件を見つけることができました。」

物件の見つけ方は人によって、そして地域によってもさまざまでした。一般的には、職場が社宅を用意してくれたり、物件を紹介してくれたりするケースが多いようです。“地域おこし協力隊”であれば、役場から紹介してもらえることも。また各自治体が主体となって運営している『空き家バンク』を活用するのも一つの手かもしれません。『空き家バンク』とは、空き家を貸したい人や売りたい人が登録し、それを介して自治体が情報を提供するサービスです。Eさんの事例のように、地域や時期によって物件の数はさまざまですので、事前に調べてみるのがよいでしょう。

>> 市町村別で『空き家バンク』を探す

物件を選ぶ際に気をつけるべきポイントは?

皆さん口を揃えておっしゃっていたのが、「風通し」と「日当たり」。仕事現場に近い山間に住むことが多いため、山や森が近い分、湿気にはとても悩まされるようです。気になる方は少し森から離れた日当たりのよい物件を探してみてください。

教育環境は?まるで地域のみんなに育てられているかのよう

ご家族で移住を検討されている方や、結婚を機に移住を考える方など、移住のタイミングや理由は人それぞれですが、お子さんの「教育環境」は移住を検討する際の大きなポイントの一つですよね。そこで、通学時間や送り迎えの有無など、実際のところを教えていただきました。

基本的に、小・中学生になるとスクールバスに乗って通学するのが主流とのことで、そこまで通学に不便を感じることは少ないよう。ただ地域によっては乗合バスで通学することもあるそうで、「お年寄りと子どもが一緒に喋りながら乗車して、おはよう、行ってらっしゃいと声をかけてもらったりするのを見ると、移住してきて良かったなと思う」こともあるようです。生徒の人数は都心に比べて少ないと言いますが、学校を越えた人とのコミュニケーションがあり、「地域のみんなに育てられている」かのように感じるそうですよ。

また小学生くらいまでであれば、お子さんと一緒に移住されるケースも多いようで、同級生に、同じように移住されてきたご家族がいらっしゃるという方も。ただし、山間部の地域になるとお子さん自体が少ない地域も目立つようになります。その分密度の濃い関係を築いているようで、お子さんの方が順応力は高いようです(笑)。

車はマスト!買い物は?病院は?

移住したみなさんは口を揃えて、「車は必要」だと言います。ただ、移住前に購入する方も移住後に購入する方もいるんだとか。特に冬場の山間部は降雪量も多く路面が凍結することもあるため、四駆やSUVがおすすめです。

気になる買い物事情はというと、これも住んでいる地区によってさまざま。「車で20~30分ほどのスーパーで購入することが多い」そうで、「毎日は行けないので、数日分まとめて買っておく」ことが多いそう。「移住した時は車を持っていなかったけど、職場の先輩が優しくて、車で買い物などに連れて行ってくれた」、「野菜はご近所からもらえるので、買い物に行ってもお肉や調味料しか購入しないことがほとんど」など、地方暮らしならではの温かなエピソードも聞けました。また生協など、自宅まで食材を届けてくれるサービスを利用するのも一つの手のようです。もちろんAmazonなどの一般的なサービスも不自由なく利用可能です。

では、生活に欠かせない病院はというと……? 基本的に「村内に一つは国民健康保険の診療所がある」とのことで安心です。ただし休日受診や急患は行っていないため、そういった場合は「近隣の市町村に行く必要がある」とのこと。

温かく、心地よい距離感のご近所付き合い

“田舎暮らし”と聞くと、都会では味わえない、ゆったりとした時間の流れや、自然との触れ合いが頭に浮かびますが、それと同時に「ご近所付き合いの大変さ」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ひと昔前に言われていたような「プライベートにまで干渉される」ということは、今はほとんどなくなっているとのこと。そしてどの方も、地域の方との繋がりをつくるために、消防団・青年団の活動や、地域の掃除などに積極的に参加されていました。都会生活が長い方は「そういうのって面倒くさいって思うかもしれないんですけど、行ってみると意外に楽しいんですよ」と話します。地域やエリアによってもご近所付き合いの濃さは違うようなので、ご自身に合った場所を選ぶのも大事なポイントですね。

奈良県での暮らしの魅力や特徴とは

奈良県宇陀市内にある「重要伝統的建造物群保存地区」の街並み

奈良県では法隆寺や興福寺をはじめとした歴史的建造物を身近に楽しむことができます。また、やはり大きな魅力の一つは、美しい山々や吉野の桜など、豊かな自然を通して肌で季節の移ろいを感じ、楽しむことができる点でしょう。都会の喧騒から離れると、「今まで感じていたストレスに気付き、価値観が変化した」という声もありました。休日に畑仕事をしたり、自宅の庭で焚き火を楽しんだり、ゆったりとした時間の中で読書を楽しんだり。また「人同士の声の掛け合いや助け合いの精神が根強く残っている」ので、人の温かさに触れる豊かな毎日を過ごすことができるそうです。林業を志す方の多くは自然が大好きだと思いますが、奈良県には自然を身近に感じながら暮らし、はたらく環境があります。

ただ、“電波の繋がりにくさ”は留意しておきたい点かもしれません。こと林業の場合、山の中では基本、電波が繋がりません。山から降りてきても、エリアによっては繋がりにくいポイントがあるので、山の麓の地域に住む場合は特に注意が必要です。また都会では普及しているキャッシュレス決済も利用できる店舗は限られます。しかし、奈良県のある地域にはいまだに“つけ払い”の文化が残っているという驚きの話も……。「足りないものを足りないとせず、別の形で補う」。そんな豊かな在り方もまた、奈良県ならではの魅力だといえます。

移住者必見。オススメの支援制度

移住を支援するサイトとして『Local Life in Nara Okuyamato』をご紹介します。本サイトでは、奥大和(奈良県 南部・東部エリアの総称)の魅力紹介に留まらず、移住地域を探すための「エリア詳細」、奈良県に体験滞在することができる「奈良県 農村民宿」、奈良県の移住を現実的にするための「移住関連施設」の紹介など、移住を支援するさまざまな取り組みがなされています。

さらに、現実的なステップとして、奈良県での仕事探しの参考となる窓口や関係機関の紹介する「仕事探し支援」や、希望する市町村への移住相談ができる窓口の紹介している「住まいを探そう」、住まいを決める一つの手段、「空き家コンシェルジュ」の紹介まで、理想の移住を叶えるためのステップが本サイトに集約されています。

また、よりリアルに奈良県のことを知ることができるようなイベント情報も満載。あらゆる視点から、奈良県の姿を知ることができます。移住したいと思ってもなかなか踏み出せず「いつか」してみたいと考えている方や、移住に興味のある方は、本サイトをチェックするだけで一気にイメージが湧くはず。ぜひチェックしてみてくださいね。

>> 移住の流れ

>> 市町村支援制度


豊かな自然や世界遺産などの歴史的建造物だけでなく、人の温かさを存分に感じることのできる奈良県。煩わしいご近所づきあいもなく、自分のペースでゆったりと自分の生活を楽しむことができるので、“あなただけの理想のライフスタイル”を実現することができそうです。
遥か昔からの貴重な歴史が色濃く残る奈良県には、移住してきた方々をおおらかに受け入れてくれる土壌が、きっとできあがっているはず。自然や歴史の奥深さと人の温もりを感じることのできる毎日を、ぜひ奈良県で送ってみませんか。少しでも奈良の林業・暮らしに興味をお持ちの方は、下記の相談窓口よりお気軽にご相談ください。

>> 相談窓口